独り言には怨念が宿っている

先日、以前から気になっていた女性と食事へ行ったんですよ。彼女とは共通の友人からの紹介で知り合った。話してみると趣味が似ていることもあって、すぐに意気投合。帰り際に連絡先を交換して、奥手なぼくにしては珍しく勇気を出して二人きりでの食事へと誘ったわけです。彼女はとびっきりの美人てわけじゃないんだけど、はにかんだ時の表情がすごくかわいい。一緒に食事をしている時もずっと笑顔でいてくれて、なんていうんだろう、その雰囲気というか、空気感みたいなのがすごくいいなって、そう思うと「好きだなー」って言葉が自然に出てきてしまった。本当に無意識の独り言だったから、言ってしまった後ですごく焦ったのだけど、彼女は笑顔を崩さず、それでいて少しだけ恥ずかしそうに「……わたしも」って言ってくれたんですよね。

まぁ全部ウソなんですけどね。書いていて死にたくなってきたんだけど、この気持ちをどうすればいいのだろうか。気になってる女性どころか女性の知り合いがいない。世の人間の半分は女性のはずなのにどうしてだろうね?

そんなぼくの女性関係についてはさておき、独り言ってヤバイと思うんですよ。ヤバイじゃ分からないか。独り言ってガチでパネェと思うんです。もっと分からなくなってしまった。とりあえず『キテる』ってことだ。わかれ。

独り言が激しい人っているじゃないですか。いつもなんかブツブツ言ってる人。ぼくの職場にもそういう人がいるんだけど、大体は「はぁ?」とか「わからない……わからない……」とか、もうちょいヒートアップすると「アアアァァ!!」「キィーーーー!」みたいな奇声まで上げだすから本当に怖い。とりあえずイラついているのだけはこれでもかってくらい伝わってくるから、その人が独り言を言い出すと場の空気が一気に悪くなる。

他の同僚と「あの人ってなんであんなに独り言が激しいんだろうね?」みたいな会話は度々あって、なんならたまに笑い話にもしていたのだけど、最近気付いてしまったんですよ。自分がことあるごとに独り言をつぶやいているのに。

かつての自分は間違いなく独り言をしない人間だったはずなのに、いつの間にかそうなっていた。多分ここ1年くらいの話だと思う。これに気がついた時は酷く狼狽してしまったね。「ついに俺も『神に授かりし自動音声(ゴッド・スピード・ユー・ブラック・エンペラー)』の使い手になってしまったか……」と。そんな念能力があるかは知らんが、ともかく、いつの間にかぼくは立派な念能力者もとい独り言プレイヤーになっていた。

ぼくの独り言には定形があって、大体は「だまれ」「うるさい」「きえろ」の3つだ。それらが発動される条件も決まっていて、過去の失敗や恥ずかしい出来事を思い出した瞬間にこれらのワードが自然と口からこぼれ落ちる。それはよく聞かないと分からないくらい小さなささやき声だけど、確実に音声となって出力されている。

過去の出来事は前触れもなく、かつ頻繁にぼくの脳裏へ訪れて、その度にぼくは念能力の使い手となってしまう。その独り言はいずれも自分自身へ、あるいは自分の過去へと向けられた悲痛な叫び声であって、間違っても他人へ向けられたものではない。それでも過去は足音もなく背後から忍び寄ってくるから、楽しい酒の席で唐突に「だまれ」とか言ったりするわけで、これ、聞かれてたら本当にマズイと思うんだよね。そんな自分に気がついてからというものの、独り言をやめねばと心に決めてかかってもぼくの念能力はキルアの疾風迅雷と同じく自動でカウンターしてしまうので、どうにも難しい。

「怒った時に物へ当たるのをやめられない人は、自分が怒るのを無意識で許してしまっている」というのをなんかの本で読んだけれど、独り言についてもこれに近いことが当てはまりそうだ。恐らくぼくは自分の独り言を心のどこかで許容してしまっている。実際に弊害があるわけでもないし、いっかーって思ってしまってる。

そんな中途半端な状態で日常を過ごしていると、ふと気付くわけです。取引先の無茶振りメールを読んだ時に「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな……」と言ってる自分に。これじゃあ同僚と同じじゃないか。このままでは『円』の範囲を徐々に広めて……ハンターネタしつこいからもういいや。

自分の思考を延々と垂れ流している半サトラレ状態の人はさておき、なんらかのストレスが言葉となって表出しているのが独り言なのだと思う。もしかしたらその分ストレス軽減になっているのかもしれないけれど、貧乏ゆすりが激しい人を見ていて気分が悪くなるのと同じで、独り言も見ていて気分が良いものではない。

そう考えると、独り言はいわば怨念と同じだ。独り言が増えた分だけ自分の心は醜くなっていく。

どうせなら綺麗な心でありたいし、他人を嫌な気持ちにさせないよう気をつけたいなと思う。同じヒトリゴトでもぼくの怨念じゃエロマンガ先生の主題歌にはならんのだ。あ~~、紗霧ちゃんとお食事デートしたい。

www.youtube.com

独り言の特効薬があったらコメント欄までご一報を。