タッチの歌詞「星屑ロンリネス」について真剣に考えてみた

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いつも自問自答してて暗いブログになってきたので、たまにはバラエティ色のある記事でも書いてみます。今回はあだち充の『タッチ』について取り上げますが、あまりにも有名な作品なのでネタバレを度外視して書きます。これから読むって人はスルー推薦。

 

はじめに

『タッチ』といえば今更説明するまでもない恋愛漫画*1の金字塔。80年代の連載当時はかっちゃんの死でファンによる暴動が起きたり、朝倉南派と新田由加派のいがみあいがやはり暴動に発展しましたね。なつかしい*2。ちなみにぼくは南ちゃん派。レオタード良いよね……

そんな『タッチ』で度々話題として上がるのが、アニメ版主題歌の歌詞。

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冒頭に出てくる「星屑ロンリネス」とは一体なんなのか。昔バズったこんなツイートもあります。

耳に残るキャッチーなフレーズながら、パッと見だと理解不能という独特な存在感を放つこの歌詞について、今回は真剣に考えてみたいと思います。

「星屑ロンリネス」のおさらい

上記ツイートにも書いてありますが、まずは「星屑ロンリネス」がどんな文脈で用いられているか確認してみましょう。

呼吸を止めて一秒
あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの
星屑ロンリネス

本当に「突然どうした」と言いたくなるフレーズの跳躍。この驚きが楽曲のフックとなって全体の良さを引き上げているのですが、それはさておき、真っ当に考えれば「星屑」とは夜空の星々、転じて男女の距離の暗喩となり、「ロンリネス」と組み合わさることで想い人との距離が埋まらない乙女の寂しさを想像力豊かに表現していると考えられます。

が、つまらないのでこの案はボツにします。本当はもっと深い、もしくは面白い意味が隠されているに決まってる。

言葉を変えてみる

「星屑ロンリネス」の分かりづらさは言葉のチョイスにあります。「星屑」と「ロンリネス」という言葉の異文化交流が意図を不明瞭にしている大きな要因と言えるでしょう。この外交をもっと円滑に行うため、「ロンリネス」の方を日本語に置き換えてみます。

「ロンリネス(loneliness)」を直訳すると「孤独」や「寂寥」などになります。これを「星屑」と組み合わせるとこうなる。

呼吸を止めて一秒
あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの
星屑孤独

なんか偽中国語っぽくなってしまった。余計ワケが分からない上に語呂が悪い。

これは失敗のようなので、今度は逆に「星屑」の方を英語(stardust)にしてみましょう。

呼吸を止めて一秒
あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの
スターダストロンリネス

今度は必殺技っぽくなってしまった。業を煮やした南ちゃんがたっちゃんを〆てる絵が浮かんだぞ……

では、それぞれの言語を逆にしてみたら……?

呼吸を止めて一秒
あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの
スターダスト孤独

どうやらこの手法はイマイチなようです。

二番を見てみる

実は「星屑ロンリネス」は曲中で二回使われています。それが二番のAメロで、内容は以下。

あなたがくれた淋しさ全部
うつってしまえばいいね
二人で肩を並べたけれど
星屑ロンリネス

一番が見つめ合う二人の機微を書いていたのに対して、二番では肩を並べても気持ちは伝わらない様を書いています。そこで「星屑ロンリネス」が出てくるのですが、やはりこの言葉は二人の距離を表しているように思え、「物理的には近いけど心の距離は遠い」という先述した解釈と同じような結論になってしまう。

このまま平凡な答えに落ち着いてしまうのか……

視点を変えてみる

この作品って見方によっては、一見何もかもが兄より優れた弟があっさり死に、その弟が成し得なかった甲子園出場を兄がはたし、更に弟が長年憧れていた幼馴染まで兄にとられるという「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!!*3」を地でいく作品にも見える。まぁそれは冗談だとしても、かっちゃん不憫すぎるよね……

ここで今一度思い出したい。本来この作品は「双子の兄弟とその幼馴染」という三角関係を描いた作品であったことを。途中でドロップアウトした主役がもう一人いるということを。歌詞に女性言葉を使われている上に歌ってる人も女性なので、つい南ちゃん視点で歌詞を読んでしまっていましたが、これを弟の和也視点で見るとどうなるか。

呼吸を止めて一秒
あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの
星屑ロンリネス

和也はぐうたらな兄の達也に対して「本気を出せば自分より凄い」と思っていて、達也と南ちゃんが相思相愛なのも察してるし、達也が和也に遠慮しているのも気づいている。その前提を踏まえた上で考えてみると歌詞に出てくる「あなた」は達也のことで、このAメロは達也の南に対する気持ちを聞き出そうとしているんだけど出来なかった、という場面になります*4

で、肝心の「星屑ロンリネス」ですが、和也視点で見てみると「星屑」は夜空の星々、転じてすれ違う達也と南*5。それを地上という全く手の届かない地点から眺めている和也の「ロンリネス」。そこには「相思相愛の男女を外野から眺めている傍観者、しかも片方は自分の想い人」という絶望にも似た深い諦めがあるし、「双子という誰よりも近い存在なのに、本音を言い合えないもどかしさ」も見て取れます。

検索して確かめてみてほしいんですけど、実際この曲の歌詞って全部和也視点で読めるんですよね。南ちゃん視点の場合「本当の気持ちを言えずにすれ違う男女」というありがちな歌詞だったのが、和也視点になると曲の味わいが一変してしまう。

「星屑ロンリネス」からは和也のどうしようもない気持ち、ひいては「cry for the moon」という言葉を思い起こさせます。

結論

「星屑ロンリネス」は和也の言葉にならない気持ちを表す深いフレーズだった!

これ。今回の結論はこれでいこう。

おわりに

考えている内に当初からは思いもよらない答えが出せたのでわりかし満足です。歌詞の解釈は個人の自由ですが、あなたはどのような答えを出したでしょうか?

*1:タッチは野球漫画というよりラブコメ

*2:筆者は当時生まれてないのでテキトーな憶測です

*3:北斗の拳』のジャギ様の名言

*4:確か本編にもそういうシーンがあって、和也は南への気持ちを告白したのに達也からはぐらかされている

*5:二人を彦星と織姫に当てはめると面白い